ーーー!!」



と、私の名を叫びながら近付いて来ている人物は――黒崎くん・・・・・・の姿をした、コンくんだ。
もともと私は霊感とかが強い方だとは思ったことがなかったんだけど、意外とあったみたいで、虚という怖い悪霊みたいなものに襲われたことがあった。そのとき助けてくれたのが、クラスメイトの黒崎くんだったのだ。そして、その後ろにもう1人の黒崎くんが。
最初は戸惑ったけど、虚が見えてしまったから、黒崎くんのやっていること、コンくんの存在を理解せざるを得なかった。

加えて、黒崎くんからはこんな説明もあった。
「1人でコンに近付くな」。
コンくんは、悲しい境遇もあった所為か、かなり女の人に飢えているみたい。だから、こんな私にでも、隙あらば・・・・・・という感じ。
そう考えると、目の前にいるコンくんは、おそらく、このまま私に抱きつくであろうことは予想がつく。でも、コンくんの能力も聞いた私は、逃げることはできないと悟る。それに、コンくんのことは嫌いじゃないし、逃げるのは悪い。だからと言って、コンくんを突き飛ばしたりすることもできない。だって、相手は黒崎くんの姿をしているんだから。
別に私は黒崎くんのことが好きだとか、そういうわけじゃないけれど、一般的に見て、彼はイケメンの部類だと思う。そんな黒崎くんにケガでも負わせてしまったら、罪悪感に苛まれ続けることになる。

結果、どうしようもできず、ただ立ち尽くしていたら、コンくんがさっきよりも随分と近い場所にいた。
・・・・・・いくら黒崎くんの姿がカッコイイからと言って、私もされるがままになるのはお断りしたい。でも、どうすればいいのか、と思っていたら、サッと黒い影が現れた。そして、その人によって、コンくんは勢いよく飛ばされてしまった。
これは本物の・・・・・・。



「黒崎くん!」

「何ボーッとしてんだよ、!コンに何されてもいいのか?!」

「いや、そうじゃないけど・・・・・・。体は黒崎くんのものだから、つい躊躇っちゃって。それに引き換え、黒崎くんは自分の体なのに、よくもあそこまで強く突き飛ばせたものだね・・・・・・。」

「あんなことでどうにかなる体じゃねぇよ。むしろ、が抵抗したぐらいで、俺の体にケガを負わせられるとでも思ってんのか・・・・・・?」

「それもそうか。わかった、今度からは全力で抵抗します。」

「わかればよろしい。」



そう言った黒崎くんはすごく頼もしく見えて、性格も男前だなと思った。
それに比べ、よろよろと戻って来たコンくんは・・・・・・御世辞にも、男前な性格だとは言えない。強いて言うなら、コンくんは可愛い性格だと思う。



「何すんだよ、一護!!せっかく、を抱けるチャンスだったのにー!」

「お前・・・・・・!そういうこと、本人の前で言うな!!」



いや、やっぱり可愛いとも言えないか・・・・・・。



「だって、は抵抗する気なさそうだったんだぜ?あのまま行ってたら・・・・・・。」

「あー!もういい!喋るな!!」

「何だよ!!いいじゃねぇか!体はお前のものなんだから、お前も間接的にと・・・・・・。」

「だから!そういうこと言うな、って言ってるだろ?!」

「一護ー、その歳で興味ないわけねぇだろ?!それとも何か!に魅力が・・・・・・。」

「それ以上言ったら、もう一遍殴るぞ?!」

「何を騒いでいるんだ、黒崎?」



そんな中、さらにイケメンの石田くんがやって来た。石田くんは、黒崎くんとは違うタイプで、イケメンって言うより、美形さんって感じかな?とにかく、この場には見目麗しい男性が3人もいる。少し劣等感に襲われそうだ。・・・・・・石田くんには特別な感情を抱いているから、尚のこと。



「さっきまで感じていた虚の気配が消えたということは、もう倒したんだろう?だったら、さっさと帰ったらどうだ?」

「てめぇに言われてなくても、そのつもりだっての!でも、を置いて帰るわけにはいかないだろ?」

「それはわかるが、だからと言って、こんなところで騒いでいる理由にはならないと思うが?」

「あー、もう!!いちいちウルセーなぁー!わーったよ、帰りゃいいんだろ?!、帰ろうぜ。」

「待て、黒崎。」

「まだ何かあんのかよ?」

「互いの家の位置を考えると、僕がさんを送った方が効率的だ。」

「・・・・・・そうだな。じゃ、のことは任せたぜ。」

「もちろんだ。」

「じゃあな、。あんま、こんな時間に出歩くんじゃねぇぞー。・・・・・・帰るぞ、コン。」

「おう。またな、!」

「あ、うん。バイバーイ。」



慌てて黒崎くんとコンくんに手を振ったけど・・・・・・、今、どういう状況ですか?!もしや、もしや・・・・・・、石田くんと2人きりでは?!!しかも、送ってくれるって・・・・・・!!



「じゃあ僕たちも行こうか、さん。」

「う、うん!あ、ありがとう!」

「気にしなくていい。だけど、一体、どうしてこんな時間に出歩いていたんだい?」

「いやぁ、ちょっと、コンビニまで買い物を・・・・・・。」

「黒崎も言っていたが、夜遅くに女性1人で外を歩くのは危険だ。」

「うん、そうだね・・・・・・。今後、気を付けるよ。心配してくれて、ありがとう。」



そうは言ったものの、今後も石田くんに送ってもらえるのなら、進んで外出したくなる。・・・・・・けど、それ以上に石田くんに迷惑をかけたくないから、本当に控えたいと思う。



「ここだったね、さんの家は。」

「そうそう。本当に、ここまで送ってくれてありがとう。石田くんも気を付けてね?」

「ありがとう。それじゃあ、おやすみ。」

「おやすみなさーい。」



どうしよう、ニヤけが止まらない・・・・・・!だって、美形の石田くんが爽やかな笑みで「おやすみ」って!!もう今夜の夢は、良いに決まってる!!

と思ったけど、世の中、そうは上手くいかないもので。特に夢を見ることもなく、私は目覚めた。
でも、昨日の現実で良いことがあったんだから、そんなことはどうでもいい。・・・・・・って、あれは本当に現実だよね??
あまりの嬉しさに、それすらわからなくなりそうになって、放課後、黒崎くんの家に寄らせてもらうことにした。



「――って感じだったわけ!これって夢じゃないよね?!」

「後のことは知らねぇけど・・・・・・。俺らに会ったのは事実だし、その後、石田が送るっつったのも現実だから、実際にそうだったんじゃねーか?つーか、聞いてほしいことがあるって言うのは、この話のことだったのかよ?」

「うん、そうだよ!」

「はいはい、そうですか・・・・・・。」

「あ、何?どうでもいいとでも思ってる?黒崎くん、ヒド〜イ。ね、コンくんもそう思うでしょ?」

「いや、一護がヒドイって言うより、もなんであんな奴が好きなんだろうなーって思ってる。」

「どうして?だって、石田くんって見た目はカッコイイし、頭も良いし、性格も優しいし、好きになっても普通じゃない?もちろん、黒崎くんもカッコイイし、頭良いし、性格も優しいし・・・・・・。」

「俺のことはいいって。」

!俺は?!」

「いや、別に黒崎くんに気を遣って言ってるわけじゃなくて、本当にそう思うんだけど・・・・・・。」

「え?俺は無視?!!」

「でもね!私は石田くんのことが好きなの。」

・・・・・・、俺を無視するなんて、ヒドイ!」

「だって、先に石田くんのことを貶したのはコンくんじゃない。」

「そこまで好きなのか?」

「うん!」



まだ納得していない、という顔のコンくんに私は満面の笑みを向ける。だって、大好きなんだもの。
石田くんって、結構クールに見えるけど、話してみると意外と面白い人だし、どんどん惹かれちゃうのよね!
などと思いながら、私がずーっとニヤけた顔をしている一方で、コンくんは何かを思い付いたような表情に変わった。



「・・・・・・あ。」

「ん?どうしたの、コンくん?」

「いやぁ、いい案を思い付いた!」

「・・・・・・なんか、嫌な予感しかしねぇよ。」

「黙ってろ、一護!」



そう言った後、コンくんはベッドからピョンと飛び降り、私に向かって嬉々と説明を始めた。視線を落とし、コンくんの方に目を向けたけど、そこまで真剣に聞く話ではないだろうと、私も薄々感じている。



「今度、アイツの体に俺を入れてみるんだ。そしたら、はもっと抵抗できない!むしろ、抱かれたいだろ?」



・・・・・・やっぱり、ろくなことじゃなかった。



「だから、お前・・・・・・!!」

「な?いい考えだろ、!」

「う〜ん・・・・・・。でも、石田くんは死神じゃないから、無理なんじゃない?」

「この際、アイツの魂はどうなってもいい!」

「えー?!それは駄目!!!」

「いや、・・・・・・。そこを突っ込む前に、もっと言うことあるだろ・・・・・・。」



たしかに黒崎くんの言う通り、私もコンくんに抱かれるのは遠慮したい。でも。正直な話。見た目が石田くんだったら、確実に断れない!!コンくんが言ったように、むしろ抱かれたい、とまでは言わないけど、やっぱり、私も年頃の女の子なわけで。興味が無いわけじゃないし、せっかくなら大好きな人と・・・・・・って、何考えてるの、私?!!
あー、駄目駄目!石田くんは、そんなことしないもの!・・・・・・いや、石田くんだって、年頃の男の子。そういうこと、考えないわけはないのかな?

なんてことを考えたけど、まさか石田くん本人に聞けるわけがない。ましてや、黒崎くんから聞いてもらうのも、もっと可笑しい。でも、やっぱり気になる。別に、抱く云々じゃなくて、恋愛とかに興味があるのか、ってところを聞いてみたい。



「えーっと、石田くん。」

「どうしたんだい、さん。」

「今更だけど・・・・・・。はい、一昨日のお礼。」

「一昨日の・・・・・・?あぁ、あれか。そんなこと、別に気にしなくていいって言っただろう?」

「いいから、いいから。別に大した物じゃないし。それとも邪魔になるかな?」

「そういうわけじゃ・・・・・・。うん、わかったよ。貰っておく。ありがとう。」

「こっちこそ、ありがとう。ところで・・・・・・。」



まるで、これからの話題がついでのように、私は何気なく話す素振りをする。



「石田くんはあの夜、どうして外に?何か用事でもあったの?」

「いや。僕は近くで虚の気配を感じたから、外に出たんだ。残念ながら、黒崎に先を越されたけどね。」

「そうだったんだ。石田くんもあまり無理しないでね?・・・・・・なんて言いつつ、その後、用事を増やしちゃったのは私だけど。」

「だから、気にしなくていいよ。」

「でも、あんなところを誰かに見られたら、石田くんにも迷惑がかかるんじゃないかな〜って思って。」

「・・・・・・どうして?」

「だって、あんな時間に2人で歩いてるんだよ?私たちの関係を勘違いしちゃう人もいるんじゃないかなー?」

「勘違い?・・・・・・あぁ、そういうことか。」

「石田くんに彼女さんとか好きな人がいるかは知らないけど、もしいたとしたら困るでしょ?」

「いや、大丈夫。問題ないよ。」

「ってことは、彼女さんも好きな人もいないの?」

「・・・・・・なかなか答えにくい質問だね。」

「あ、ゴメン。そうだよね。」



う〜ん、やっぱり難しい。何気なく話せる内容じゃないもんね。
と思っていたけど、その後、石田くんはサラッと口にした。



「少なくとも、彼女はいないとだけ答えておくよ。」

「へぇー、そうなんだ。」



本当は、「えっ?!そうなの?!!」って言いたいぐらいに驚き、そして喜んでいる。それに、「じゃあ、好きな人は?!」とも聞きたい。でも、私は何気なく話し始めたからこそ、ここも平然と返さなければならない。
そして、その後も石田くんは自然に続けた。



「そう言うさんは大丈夫だったのかい?」

「えっ?!う、うん・・・・・・。」



それなのに、それが予想外だったから、普通に返すことができなかった。
でも、普通そうだよね。石田くんも話してくれたんだから、私も言わなきゃいけない。当然だ。



「じゃあ、さんも彼氏はいない、ってことかな?」

「もちろんだよ!石田くんだっていないのに、私なんてもっといるわけないじゃない!」

「どういう意味だい?」



そう言って、石田くんは少し困ったように笑った。・・・・・・それですよ!!そんな素敵な笑みで見られたら、私なんて心臓が破裂しそうなぐらいにドキドキする。きっと、他の女の子だってそうだ。
つまりは。



「石田くんみたいな素敵な人がモテるのは当然だし、彼女がいたって可笑しくないけど、それを差し置いて、至って普通の私に彼氏がいるなんてあり得ないよ。」

「そんなことないよ。さんの方が充分魅力的だと思うけど?」



・・・・・・。マズイ。非常にマズイです。いや、だって!そんな返答が来るなんて思ってなかったから!!
さっき以上に動揺した私は、今、顔が真っ赤になっているに違いない。だけど、最初の目的だけは忘れずに、私は話を続けた。
ま、まぁ、別に、石田くんに特別な感情を抱いていなかったとしても、こんな風に言われたら照れてしまうのも当たり前だよね?!
おそらく、石田くんもそう捉えてくれたらしい。私の不自然な反応を見ても、何事も無かったかのように返事をしてくれた。



「い、いや!そ、それはないよ!!石田くんの方が絶対モテる!!・・・・・・で、でも、石田くんがそういうのに興味が無かったら、彼女がいないのも当然なのかもしれないねっ。」

「そういうの、っていうのは・・・・・・モテることに対して?それとも、恋愛全般に関して?」

「え?そ、それって、違うの??」

「少なくとも、僕の中では違うね。」

「どういう風に?」

「また答えにくいけど、他ならぬさんからの質問だからね。特別に答えるとするよ。」

「そ、そう?あ、ありがとう・・・・・・。」

「僕はさんのことが好きだから、他の人に好かれたいとは思わない。そういう意味では、モテることに対して興味が無いと言える。」

「・・・・・・へ?」

「だけど、さっきも言った通り、僕はさんのことが好きだから、恋愛に関して興味が無いわけがない。」

「え・・・・・・えぇー?!嘘でしょ?!」

「嘘だった方が良かった?」



そう言って、石田くんは少し寂しそうに微笑む。・・・・・・ズルイ。



「・・・・・・いえ。嘘じゃない方が良いです。」

「それは良かった。」

「で、でも、どうして急に言おうと思ったの?最初は答えにくいって言ってたのに、どうして急に、こ、告白、なんて・・・・・・。」

「さっき、あまりにさんの反応が良かったからね。もしかして、って思ったんだよ。・・・・・・ずるい、かな?」



首を大きく横に振ったけど、やっぱりズルイと思います!・・・・・・いや、いいんだけど!!



「じゃあ、あの日、私を送ってくれたのも・・・・・・。」

さんと少しでも長く一緒にいたかったから、だね。」

「あ、ありがとう・・・・・・。」



石田くんと話していると、どんどん顔が熱くなってきた。だって、好きなんだもの・・・・・・!
さらに、石田くんは最後にとんでもない爆弾を落としていった。



「だから、夜は危険だ、って言ったんだ。」

「ん?だから、って・・・・・・?どういうこと?」

「だから、僕みたいに下心がある奴もいるっていうことだよ。もちろん、それ以上にさんを大事にしたいという気持ちも大きいけどね。」



ちょ、ちょ・・・・・・!それ、どういう意味ですか?!!下心って何?!送り狼的なやつ?!
その後、授業中でさえも、私がコンくん並みに悶々としてしまったのも無理はない。













 

すいません(苦笑)。『BLEACH』でギャグ、って思ったら、どうしてもコンくんを出したくなって・・・・・・こうなっちゃいました★(←)
全体的な出来はともかくとして、コンくんを書くのは非常に楽しい(笑)。コン夢も書きたいぐらいです(←無茶)。まぁ、それは無理でも、こういう「コンが入ったら?!」シリーズ(?)を他のキャラでもやりたいなぁ、なんて思ってます。懲りてなくて、すいません(苦笑)。

そんなわけで、ぶっちゃけコンくんがメイン(?)だったので、石田くんのキャラが崩壊し過ぎです;;石田くんはツンデレな感じもいいけど、意外とストレート攻めでもいいかな、と・・・(←)。
はい、もう本当、いろいろと申し訳ございませんでしたー・・・・・・!!(滝汗)

('10/10/21)